パートや家族にAIを使わせるときのルール。小さな事業はA4半分・5項目で足りる

数人規模の事業で人にAIを使わせるなら、分厚い社内規程は要りません。決めるのは「どのアカウントで使うか」「入れてはいけないもの」「そのまま出さないもの」など5項目だけ。アカウントの選び方の判断表、30分でルールを作って渡す手順、辞めるときの片づけまでまとめました。

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結論から書きます。パート・アルバイト・手伝ってくれる家族など、数人規模でAIを使わせるなら、ルールはA4半分・5項目で足ります。 そして一番大事なのは文章の中身よりも、「誰のアカウントで使うか」を最初に決めることです。

「禁止」にするのはおすすめしません。禁止しても、スマホで自分の無料アカウントを使われるだけで、何を入れたか分からなくなるからです。

大企業向けのルールがそのまま使えない理由

「生成AI 社内ルール」で調べると、ひな形がたくさん出てきます。一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)も利用ガイドラインのひな形を無料で公開しています。中身はしっかりしていますが、数人の事業にはそのまま当てはまりません。

  • 条文が多すぎて読まれない。 何ページもある規程は、パートさんは読みません。読まれないルールは無いのと同じです
  • 「情報システム担当」がいる前提。 小さな事業では、確認するのも許可するのも店主ひとりです
  • 一番の穴が書かれていない。 小さな事業で実際に起きやすいのは、本人の私用アカウントに仕事の情報が残ることです。辞めたあとも、そのやりとりは本人のスマホに残り続けます

だから、小さな事業では「何を守るか」を絞り込み、口で説明できる量にします。

最初に決める:どのアカウントで使わせるか

ここが一番の分かれ目です。

使い方 向いている場面 注意点
使わせない お客様の個人情報・健康情報を日常的に扱う仕事が中心 「使っていない」ことを確認できないので、理由を説明して納得してもらう
本人の無料アカウント(私物) 文章の言い換え・ネタ出しなど、お客様の情報が一切からまない作業だけ 仕事の情報が本人の手元に残る。無料版は、設定しないと入力内容が学習(AIの改良)に使われることがある
事業で用意した共有アカウント 1〜2人が同じ作業をする 1つのアカウントを複数人で使うのは規約上認められていないサービスが多い。使う前に利用規約を確認
チーム向けの有料プラン 3人以上が日常的に使う 人数分の料金がかかる。そのかわり、多くのサービスで仕事のデータは標準で学習に使われず、辞めた人を外せる

判断の目安はこうです。

  • お客様の情報が少しでもからむ作業に使わせるなら、私用の無料アカウントはやめる。 チーム向けプランか、その作業自体をAIに回さない
  • 言い換えやネタ出しだけなら、私用アカウントでもよい。 ただし、入力内容を学習に使わせる設定をオフにしてもらう(ChatGPTなら設定の「データ コントロール」の中の「すべての人のためにモデルを改善する」)
  • 迷ったら、まず店主だけが使い、パートさんには使わせない。 自分で1か月使ってみて、任せたい作業がはっきりしてから広げても遅くありません

なお、ChatGPTの法人向けプランについて、運営元のOpenAIは「仕事用のデータは標準で学習に使わない」と公式に説明しています。ただし「学習に使わない」は「どこにも保存されない」という意味ではありません。入れてはいけない情報は、どのプランでも入れないのが基本です。

ルールに書く5項目

これをA4半分に書いて、渡すだけで十分です。

  1. 使っていいツールとアカウント。 「ChatGPTを、店のアカウントで」のように名前まで書く。書かないと、各自が好きなアプリを入れます
  2. 入れてはいけないもの。 「個人情報」のようなあいまいな言葉ではなく、実物で書きます。お客様の名前・住所・電話番号、カルテや相談内容、口座番号、パスワード、取引先から届いた書類
  3. そのまま外に出さないもの。 AIが作った文章を、お客様へのメール・チラシ・SNSにそのまま出さない。出す前に店主に見せる
  4. 迷ったときの連絡先。 「迷ったら入れずに、店主に聞く」。これだけで事故の大半は防げます
  5. やってしまったときの動き方。 「隠さず、すぐ言う。怒らない」。怒られると思うと、人は隠します。早く分かれば、やりとりを消す・関係先に連絡するなど打てる手があります

30分でルールを作って渡す手順

  1. 任せたい作業を3つ書き出す(5分)。 「お知らせ文の下書き」「SNSのネタ出し」「マニュアルの言い換え」など。書き出せないなら、まだ人に使わせる段階ではありません
  2. それぞれに「お客様の情報がからむか」を書く(5分)。 からむものがあれば、上の表で「私用の無料アカウント」は外れます
  3. AIに5項目のたたき台を作らせる(10分)。 「従業員3人の小さな店で、パートさんにAIを使わせるルールをA4半分で。入れてはいけない例は具体的に」と頼みます。出てきたものから、自分の店に関係ない項目を削ります
  4. 「OK例・NG例」を1つずつ足す(5分)。 「OK:『雨の日の来店特典のお知らせ文を考えて』」「NG:『〇〇様への返信を書いて』+お客様のメールを貼る」。例があるほうが、条文より伝わります
  5. 紙で渡して、目の前で1回使ってもらう(5分)。 読んでもらうだけでは足りません。実際にOK例の作業を1つやってもらい、設定画面も一緒に確認します

よくある失敗と回避策

  • 「全面禁止」にして、裏で使われる。 禁止すると相談されなくなります。回避策は、使っていい作業を先に決めて渡すこと。「使っていい範囲」があると、人はそこから出にくくなります
  • ルールを口頭だけで伝える。 1か月後には誰も覚えていません。紙1枚にして、パソコンの横に貼っておきます
  • AIが作った文章が、お客様にそのまま届く。 丁寧すぎて事務的な文や、事実と違う日付が混ざることがあります。「外に出る文章は店主が見る」を例外なく守ります
  • 辞めた人のアカウントを放置する。 共有アカウントならパスワードを変える、チーム向けプランなら外す。私用アカウントを使わせていた場合は、仕事のやりとりを消してもらうよう頼みます。辞めるときの手順を、最初のルールに1行入れておくと、言い出しやすくなります
  • ミスを叱って、次から報告が来なくなる。 一度の失敗より、隠されるほうがずっと危険です

なお、ルール違反をしたときに処分(懲戒)をしたい場合は、就業規則に書いておくことなどが必要になります。労務の扱いは、必ず社会保険労務士など専門家に確認してください。

向かない人・向かない場面

  • 健康情報や子どもの情報など、漏れると取り返しがつかない情報を日常的に扱う事業。 ルールより先に「そもそもAIに回さない作業」を決めてください。場合によっては、人には使わせないのが正解です
  • 人に任せたい作業がまだ決まっていない人。 ルールだけ先に作っても使われません。まず店主自身が使い慣れるほうが先です
  • パートさんがパソコン・スマホに不慣れな場合。 ルールの前に、使い方そのものを教える時間が要ります。無理に広げなくてかまいません

まとめ

  • 数人規模なら、ルールはA4半分・5項目で足りる
  • 一番大事なのは「誰のアカウントで使うか」。お客様の情報がからむなら私用の無料アカウントはやめる
  • 入れてはいけないものは、あいまいな言葉ではなく実物で書く
  • 外に出る文章は店主が見る。迷ったら入れずに聞く
  • 「やってしまったら、すぐ言う。怒らない」と、辞めるときの片づけまで最初に決めておく

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