提案資料やスライドをAIで作る。ひとり事業主は「全部作らせる」より「骨組みだけ出させて、いつもの道具で仕上げる」ほうが早い

AIのスライド作成ツールは、数分でそれらしい資料を出してくれます。ただし中身は「どの会社にも言えること」になりがちで、数字や実績をもっともらしく足し、PowerPointに書き出すと日本語の改行が崩れることもあります。スライド専用ツールを使う・骨組みだけAIに出させる・そもそもA4一枚にする、の判断表、30分で仕上げる手順、よくある失敗をまとめました。

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結論から書きます。ひとり事業主の提案資料は、AIのスライド専用ツールに丸ごと作らせるより、AIチャットに「骨組み(何枚目に何を書くか)」と文章だけ出させて、いつも使っているPowerPoint・Googleスライド・Canvaに流し込むほうが、結局早く仕上がることが多いです。そして意外と多いのが、そもそもスライドにしないほうがいい場面です。

この記事は、AIスライドツールの公式情報と、提案資料づくりでよく起きる失敗を整理したものです。特定のツールの使用レビューではありません。

なぜ「全部作らせる」とうまくいかないのか

AIのスライド作成ツール(Gamma、Canvaの生成機能、PowerPointのCopilotなど)は、テーマを1行入れるだけで、表紙から締めまで10枚前後の資料を数分で出してくれます。見た目はかなり整っています。

それでも提案に使うと困るのは、次の3つです。

  1. 中身が「どの会社にも言えること」になる:「業務効率化」「顧客満足度の向上」のような、相手の名前を入れ替えても通じる言葉が並びます。提案を受ける側は、まさにそこを見て「うちのことを分かっていない」と判断します
  2. 数字や実績をもっともらしく足す:「導入企業の満足度95%」「作業時間を40%削減」のような数字を、根拠なく入れてくることがあります。そのまま出すと、聞かれたときに説明できません
  3. 直すのに時間がかかる:AIが決めたデザインやレイアウトの中で文章を直すと、文字があふれる・枚数がずれる・配色が崩れる、が起きます。PowerPoint形式に書き出したあと、日本語の改行位置がおかしくなることもあるので、書き出し後の確認は必須です

つまり、AIが得意なのは「見た目を整えること」と「たたき台の文章」で、苦手なのは「この相手にだけ言えること」です。提案資料の価値はほぼ後者にあります。

どう作るかの判断表

場面 おすすめの作り方 理由
既存のお客様への追加提案・見積もりの説明 スライドにしない。A4一枚(Word・Googleドキュメント) 相手は内容を知っている。読み返しやすさが大事
初めての相手への提案(1対1・画面共有) 骨組みだけAIチャット→いつもの道具で仕上げ 相手に合わせた中身が勝負。見た目は普通で足りる
説明会・セミナー・勉強会で話す AIスライド専用ツールを使ってよい 一般的な内容が中心で、見た目の印象が効く
補助金・融資・入札など様式が決まっている AIで資料を作らない。様式に従う 審査側の書式が優先。見た目の工夫は評価されない
社内・家族・パートさん向けの手順説明 スライドより手順書 読みながら作業できる形のほうが役に立つ

迷ったら「相手はこの資料を、自分がいない場所で読み返すか」で決めてください。読み返すならA4の文書、その場で見せて話すならスライドです。

30分で仕上げる手順(骨組み方式)

いつものAIチャット(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、普段のスライドソフトだけで進めます。

  1. 先に自分で3行だけ書く(5分):「相手は誰で、今何に困っているか」「自分が出す解決策」「相手に決めてほしいこと(契約・試用・次回打ち合わせ等)」。ここはAIに書かせません
  2. AIに骨組みを出させる(3分):上の3行を貼って「この提案を6枚のスライドにするとしたら、各ページの見出しと、載せる内容を箇条書きで3つずつ出して。数字や実績は入れず、入れるべき場所に【要確認】と書いて」と頼みます
  3. 骨組みを削る(5分):相手に関係ないページ、一般論のページを消します。6枚の案なら4〜5枚に減ることが多いです
  4. 【要確認】を自分の数字で埋める(7分):料金・期間・過去の実績は、手元の資料から自分で入れます。出せない数字は書きません
  5. いつもの道具に流し込む(7分):普段のテンプレートに、見出しと箇条書きを貼ります。1枚に載せるのは見出し+3行までを目安にします
  6. AIに「突っ込み役」をさせる(3分):完成した文章を貼り、「あなたはこの提案を受ける側の担当者です。決める前に聞きたい質問を5つ出して」と頼みます。答えられない質問があれば、そのページを直します

1〜2時間かけて白紙から作っていた人なら、30分前後まで縮められる見込みがあります。逆に、普段から同じ型の資料を使い回している人は、短縮効果は小さめです。

スライド専用ツールを使うなら確かめること

説明会資料などで専用ツールを使う場合は、始める前に次を公式ページで確認してください。

  • 無料版の上限:多くのツールは無料版に回数や枠の上限があります。たとえばGammaの公式ヘルプでは、無料版はAIを使うたびに「クレジット」を消費し、登録時にもらった分を使い切ると自動では補充されない仕組みだと説明されています(執筆時点)。Canvaも無料プランのAI利用は月ごとの上限つきです。数字は変わるので、使う前に料金ページを見てください
  • 書き出せる形式:PowerPointやPDFで書き出せるか。書き出したあと、文字の崩れ・改行・フォントを必ず目で確認します
  • 入れる情報:お客様の社名・個人名・見積金額を入れる前に、そのツールのデータの扱いを確認します。迷うなら、社名は「A社」に置き換えて作り、最後に自分で戻します
  • 画像の扱い:ツールが自動で入れた画像を使うときは、商用利用の条件を確認します

よくある失敗と回避策

失敗 何が起きるか 回避策
AIが入れた数字をそのまま残す 「この95%の根拠は?」と聞かれて答えられない 骨組みの段階で「数字は入れず【要確認】と書いて」と指示する
枚数を盛る 15枚の資料を10分で説明できず、肝心の料金まで届かない 1対1の提案なら5枚前後まで。料金と次の一歩は前半に置く
デザインを何度も作り直す 見た目の調整に1時間消え、中身が薄いまま デザインはいつものテンプレート1つに固定する
書き出し後を確認しない 相手の画面で改行がずれ、文字がはみ出る PDFにして自分のスマホでも開いて確認する
相手の社名だけ差し替えて使い回す 前の相手の業種の話が残っていて信用を落とす 使い回すときは「相手の困りごと」のページを必ず書き直す

向かない人・向かない場面

  • 資料の型がすでに決まっている人:毎回同じテンプレートに数字を入れるだけなら、AIを挟む手間のほうが大きくなります
  • 話すのが得意で、資料は補助程度の人:A4一枚のメモで足ります。スライドを作る時間を、相手の下調べに回したほうが成果につながります
  • 審査書類や公的な様式:AIの見た目の工夫は評価されません。決められた様式と記入例に従ってください

まとめ

  • AIスライドツールは見た目を整えるのが得意。「この相手にだけ言えること」は苦手
  • 既存客ならA4一枚、初めての相手なら骨組みだけAI、説明会なら専用ツール
  • 最初の3行(相手の困りごと・解決策・決めてほしいこと)は自分で書く
  • AIには「数字は入れず【要確認】」と指示し、数字は自分で埋める
  • 完成したら、AIに「受ける側の担当者」として質問させて穴をふさぐ

見積書そのものの作り方は見積書づくりにAIを使う、PowerPointのCopilotにお金を払うかどうかはOfficeやGoogleに付いてきたAI(Copilot・Gemini)に追加で払うか、AIを反対役にして考えを固めるやり方はAIを「壁打ち」相手にするをどうぞ。

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