AIで自分でやるか、外注するか。迷ったら「失敗したときに困る相手」で分け、外注するなら「AIを使っていいか」を先に決めて伝える
AIが使えるようになって、チラシや文章、ちょっとしたデザインを「外に頼むか、自分でAIでやるか」で迷う場面が増えました。値段の安さで決めると、あとで作り直しになりがちです。仕事ごとの判断表、自分の時間を値段に直す計算の仕方、外注するときにAIについて先に決めておく3つ、よくある失敗をまとめました。
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結論から書きます。「AIで自分でやるか、外注するか」は、値段ではなく「失敗したときに困るのは誰か」で分けてください。困るのが自分だけなら、まずAIで自分でやる。お客様や取引先の目に長く触れるもの、作り直しが高くつくものは外注(またはAIでたたき台を作ってから外注)にします。
そして外注すると決めたら、依頼の前に「相手がAIを使っていいか」「こちらの資料をAIに入れていいか」「できたものの権利はどうするか」の3つを決めて、文字で伝えておく。ここを決めずに頼むと、後で揉めます。
この記事を読み終わると、手元にある仕事を「自分でAI」「外注」「AIでたたき台→外注」のどれにするかを、1件ずつ決められるようになります。
なお、この記事は特定の外注サービスを使い比べたものではなく、公開されている規約・公的な情報と、ひとり事業主の現場でよく起きる判断を整理したものです。
なぜ「値段」で決めると失敗するのか
AIは無料か月額の定額で使え、外注は1件ごとにお金がかかります。値段だけ比べれば、ほとんどの仕事が「AIで自分でやる」になってしまいます。
ところが実際には、次の2つの費用が見えていません。
- 自分の時間:AIで作ると「頼む → 直す → また頼む」を何度も繰り返します。慣れないデザインだと、1時間のつもりが半日になります
- 作り直しの費用:自分で作ったチラシを刷ってから誤りや見づらさに気づくと、印刷代も配った手間も無駄になります
逆に、何でも外注すると、短いお知らせ文やSNSの1投稿のために依頼・確認・支払いのやり取りが発生し、頼む手間のほうが大きくなります。
そこで、値段より先に「失敗したら誰が困るか」を見ます。
仕事ごとの判断表
ひとり事業主がよく迷う仕事を並べました。あくまで目安です。自分の得意・不得意で1段ずらしてかまいません。
| 仕事 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| メール・お知らせ・SNSの短い文章 | 自分でAI | 失敗しても直せばすむ。頼む手間のほうが大きい |
| 社内(家族・パート向け)の手順書 | 自分でAI | 読むのは身内。自分の段取りを知っているのは自分だけ |
| ホームページの文章(サービス説明など) | AIでたたき台→自分で仕上げ | 中身を知っているのは自分。文章の上手さより事実の正しさが大事 |
| チラシ・ポスター(印刷するもの) | AIでたたき台→外注 | 刷ったら直せない。文言はAIで固め、レイアウトはプロに |
| ロゴ・看板・名刺のデザイン | 外注 | 何年も使う顔。AIで作った画像は自分の権利として守りにくい |
| ホームページの作成そのもの | 外注(文章は自分で用意) | 表示崩れ・お問い合わせ不具合はお客様を逃す |
| 契約書・規約・税金の書類 | 専門家に依頼 | 間違えたときの損が大きい。AIは「読む下見」まで |
| 動画の編集(字幕・カット) | 自分でAI(本数が多ければ外注) | アプリの自動機能で足りることが多い |
| 写真撮影 | 外注(日常の投稿は自分で) | 看板になる写真はAIで作らず実物で |
ポイントは真ん中の「AIでたたき台→外注」です。外注先に「いい感じに作ってください」と頼むと、こちらの考えを聞き出す打ち合わせに時間とお金がかかります。AIで文言や構成のたたき台を作り、「この内容で、見やすくしてください」と渡すと、話が早く、修正の回数も減りやすくなります。
自分の時間を値段に直す(5分でできる計算)
「自分でやれば無料」と感じるのが一番の落とし穴です。次の手順で、一度だけ数字にしてみてください。
- 自分の1時間あたりの稼ぎを出す:月の売上(経費を引いたもの)÷ 月に働いた時間。たとえば30万円 ÷ 150時間なら、1時間2,000円です
- AIで自分でやった場合の時間を見積もる:初めての種類の仕事なら、思っている時間の2倍で見積もります
- 「時間 × 1時間の稼ぎ」を出す:チラシに4時間かかるなら、2,000円 × 4時間 = 8,000円分の時間を使っている計算です
- 外注の見積もりと比べる:外注のほうが少し高くても、空いた4時間で本業の仕事が1件入るなら、外注のほうが得です
- 「次回も使えるか」を足して考える:一度AIで型を作れば次回から30分で済む仕事(毎月のお知らせなど)は、自分でやる価値が上がります
この計算は厳密でなくてかまいません。「無料だと思っていたものに、実は8,000円分の時間を使っていた」と気づくだけで、判断がかなり変わります。
外注するとき、AIについて先に決める3つ
最近は、外注先がAIを使って作業するのが当たり前になりつつあります。それ自体は悪いことではありません。問題は、何も決めずに頼んで、あとで「AIで作ったなら安くして」「そんなつもりじゃなかった」と揉めることです。
大手のクラウドソーシング(ネットで仕事を頼めるサービス)のクラウドワークスは、2024年7月に公表したAIの扱いの方針で、AIを使うこと自体は禁止せず「受発注者間の取り決めに委ねる」としています。同じ方針の中で、頼む側には、合理的な説明なくAI利用だけを理由に値下げしたり、受け取りを拒んだりしないこと、相手の納品物を同意なくAIの学習に使わないことを求めています。つまり、決めるのは頼む側と受ける側、ということです。
そこで、依頼の前に次の3つを決めます。
- 相手がAIを使っていいか:「使ってよい」「たたき台までならよい」「使わないでほしい」のどれか。迷ったら「使ってよいが、使った部分は教えてほしい」が無難です
- こちらの資料をAIに入れていいか:お客様の名前・写真・連絡先が入った資料を渡すなら、「AIツールには入れないでください」と一文添えます。自分がAIに入れない情報は、外注先にも入れさせない、と考えてください(線引きは「AIに入れていい情報・ダメな情報」で整理しています)
- できたものの扱い:ロゴやイラストなら、データ一式をもらえるか、自由に直して使ってよいか、他の場所に転用してよいかを決めます。AIで作られた部分は著作権で守りにくいことがあるため、気になる場合は「AIを使わずに作ってほしい」と最初に伝えます
これらは口約束にせず、メールやメッセージで文字に残します。
あわせて知っておきたいのが、2024年11月に始まったフリーランス法(個人で働く人に仕事を頼むときのルール)です。公正取引委員会の特設サイトによると、従業員を雇っていない事業者がフリーランスに頼む場合でも、仕事の内容・報酬の額・支払期日などを、書面やメール・メッセージで「直ちに」示す義務があります(口頭だけでは足りません)。上の3つと一緒に、依頼文に書き込んでおくと一度で済みます。細かい当てはまり方は、公正取引委員会の特設サイトか専門の窓口で確認してください。
よくある失敗と回避策
- AIで作ったものを「ほぼ完成」として外注先に渡す。 「少し整えるだけ」のつもりが、実際は作り直しになり、追加料金で揉めます。→ 渡すときは「たたき台です。構成から変えてかまいません」と言い、どこまで任せるかを先に決めます
- AIでロゴを作り、名刺と看板まで刷ってしまう。 あとで似たマークが見つかっても、刷った物は戻りません。→ 長く使う顔は外注。AIは「案出し」までにします
- 外注先が顧客情報をAIに入れていた。 こちらが禁止していなければ、相手は悪気なく入れます。→ 個人情報が入った資料は、渡す前に名前を消すか、「AIに入れない」を依頼文に書きます
- AIを使われたと知って、一方的に値下げを求める。 品質が約束どおりなら、AIを使ったかどうかだけを理由にするのは筋が悪く、相手との関係も壊れます。→ 気になるなら、依頼の前に決めておきます
- 全部を自分でやり、本業の時間が削れる。 「AIがあるから外注はいらない」と考えると、慣れないデザインに毎週半日消えます。→ 上の時間の計算を一度してから決めます
向かない人・向かない場面
- デザインや文章を作るのが好きで、それ自体が気分転換になる人。 時間の計算どおりに外注へ回すと、かえって仕事がつまらなくなることがあります。好きなものは自分でやってかまいません
- 外注先と長い付き合いがあり、言わなくても分かってくれる人。 この場合、3つの取り決めは「確認」程度で十分です。ただし個人情報の扱いだけは一度言葉にしておきます
- 医療・法律・お金など、表現に決まりがある業種の広告。 AIで作るか外注かの前に、業界のルールを確認する必要があります。迷ったら公式の窓口か専門家に相談してください
まとめ
- 「AIで自分でやるか外注か」は、値段ではなく失敗したときに困るのが誰かで分ける
- 短い文章や身内向けは自分でAI、印刷物はAIでたたき台→外注、ロゴや看板・ホームページ本体は外注
- 「自分でやれば無料」は錯覚。1時間の稼ぎ × かかる時間で一度だけ数字にする
- 外注するなら、AIを使っていいか/資料をAIに入れていいか/できたものの扱いの3つを依頼前に文字で伝える
- フリーランスに頼むなら、従業員がいなくても取引条件を文字で示す義務がある
AIで作った画像や文章の権利については「AIで作った画像をチラシやホームページに使っていいか」と「AIに書かせた文章は誰のものか」、そもそもAIに任せる範囲は「ひとり事業主がAIに任せていい仕事・任せてはいけない仕事」で詳しく書いています。