補助金の申請書をAIで作っていいか。丸投げが不採択になる理由と、任せていい作業の線引き
補助金の申請書づくりにAIを使うこと自体は禁止されていません。ただし公募要領には「自分で考えた計画であること」「他社と似た計画は申請制限」「口頭審査は本人だけ」といった決まりがあり、丸投げはここに引っかかります。任せていい作業の判断表と、申請までの手順をまとめました。
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結論から言うと、補助金の申請でAIを使うのは問題ありません。ただし、AIに使ってよいのは「読む・整理する・点検する」までです。計画の中身そのもの(何をやるか、なぜ自分の店でそれをやるのか、数字)は、自分で決めて自分の言葉で書く必要があります。
この記事を読むと、「補助金の申請でAIに何を任せ、何を自分でやるか」を決められるようになります。
なお、この記事は2026年9月時点の公募要領(募集のルールをまとめた公式の文書)を読んで整理したものです。補助金のルールは募集の回ごとに変わります。申請前には、必ずその回の公募要領と、商工会・商工会議所などの窓口で確認してください。
丸投げがダメな理由は「公式の決まり」にある
「AIで書いた申請書は審査員にバレる」という話はよく見かけます。ただ、それより大事なのは、公募要領そのものに、丸投げと相性の悪い決まりが書かれていることです。代表的な補助金2つから、実際の記載を紹介します。
1. 小規模事業者持続化補助金(ひとり事業主が一番使いやすい補助金)
第19回の公募要領には、この補助金は事業者が自ら経営を見つめ直して計画を作ることを支援するものだ、という趣旨が書かれています。そのうえで、自分で検討した様子が見られない場合や、自分で検討していなかったと発覚した場合は、評価に関わらず不採択・交付決定取消になる、と明記されています。
AIに「持続化補助金の計画書を書いて」と頼んで出てきた文章は、どの店にも当てはまる一般論になりがちです。これはまさに「自分で検討した様子が見られない」書類です。
2. ものづくり補助金(設備投資向けの、金額が大きい補助金)
第23次の公募要領には、次のような決まりがあります。
- 他の事業者と同じ、または似た内容の計画を、わざと、または重大な不注意で申請した場合、1回目は次回・次々回の公募に申請できなくなる(2回目以降は4回分)
- 一定の基準を満たした申請者には、オンラインの口頭審査(30分程度)がある。対応できるのは申請事業者本人1名だけで、コンサルタントなどの同席は一切不可。録音もされる
AIは、同じような頼み方をされると同じような文章を返します。同業者が同じ補助金に同じAIで申請すれば、計画書が似てくるのは自然なことです。さらに口頭審査では、書類に書いた内容を自分の言葉で説明できなければ通りません。AIが書いた計画を、本人が説明できない。これが一番まずい状態です。
作業ごとの判断表
申請までの作業を分けると、AIに任せていい部分と、任せてはいけない部分がはっきり分かれます。
| 作業 | AIに任せていいか | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 公募要領(数十ページ)の要点を読む | ◎ 任せてよい | PDFを読ませて「対象者・対象経費・締切・必要書類」を抜き出させる。最後は原文で確認 |
| 自分が対象になるかの一次チェック | ○ 条件つき | AIの判断は目安。最終判断は窓口に聞く |
| 自分の考えを聞き出してもらう(壁打ち) | ◎ 任せてよい | AIに質問役をさせると、自分の頭の中が整理できる |
| 計画の中身(何を・なぜ・誰に)を決める | ✕ 自分で | ここが審査される部分。AIに決めさせない |
| 売上や費用の数字を作る | ✕ 自分で | 実績と見積書が根拠。AIが作った数字は根拠がない |
| 自分で書いた文章の読みやすさを整える | ○ 条件つき | 言い回しの修正まで。内容を足させない |
| 審査項目に沿って書けているかの点検 | ◎ 任せてよい | 「審査項目のどれが弱いか指摘して」と頼む |
| 誤字・数字の食い違いチェック | ◎ 任せてよい | 表と本文で金額がズレていないか等 |
一言でまとめると、AIは「読む係」と「点検係」。書く係は自分です。
申請までの手順(AIの使いどころ込み)
ここでは、ひとり事業主がいちばん使う機会の多い持続化補助金を想定した流れを紹介します。
- 補助金を探す:国の補助金の電子申請サイト「jGrants(Jグランツ)」や、中小企業庁の「ミラサポplus」で探します。AIに「私に合う補助金は?」と聞くのはおすすめしません。AIは古い情報や、もう終わった募集を答えることがあるからです(→AIが平気で嘘をつく理由と、嘘を見抜く3つの方法)。
- 最新の公募要領を公式サイトからダウンロードする:必ず「その回」のものを使います。
- AIに公募要領を読ませる:PDFを渡して「対象になる事業者の条件、対象になる経費、ならない経費、締切、必要書類を表にして。原文のページ番号も書いて」と頼みます。ページ番号を書かせるのは、あとで原文を確認するためです。
- 商工会・商工会議所に相談の予約を入れる:持続化補助金は、地域の商工会・商工会議所が発行する書類(事業支援計画書)が必要です。締切より前に発行の締切があるので、早めに動きます。
- AIに質問役をさせて、自分の考えを書き出す:「私は○○業のひとり事業主です。補助金で△△をしたい。事業計画を考えるために、私に1問ずつ質問してください。答えを勝手に補わないでください」と頼みます。答えは自分の言葉で打つか、声で話します。
- 計画書は自分で書く:手順5で書き出したメモを見ながら、公募要領の様式に沿って書きます。うまく書けなくても、自分の店の具体的な話(お客様の層、今の困りごと、数字)が入っていることのほうが大事です。
- AIに点検させる:公募要領の「審査項目」の部分と自分の計画書を渡して、「審査項目ごとに、書けている・弱い・書けていないを判定して、理由を書いて」と頼みます。直すのは自分です。
- 窓口で見てもらってから提出する:商工会・商工会議所の担当者に計画書を見てもらいます。
慣れていない人が一から書くと、計画書づくりは何日もかかることがあります。手順3と7をAIに任せるだけでも、「長い公募要領を読む時間」と「見直しの時間」はかなり減らせます。ただし、手順5と6の「考える時間」は減りません。減らしてはいけない時間だと考えてください。
よくある失敗と回避策
失敗1:古い回の公募要領で書いてしまう AIに「持続化補助金のルールを教えて」と聞くと、過去の回の情報が混ざることがあります。対象経費や補助額は回ごとに変わります。 → 回避策:AIには、自分でダウンロードした最新の公募要領を渡して、それだけを根拠に答えさせる。
失敗2:AIが書いた数字をそのまま使う 「売上が前年比120%になる見込み」のような数字を、AIはもっともらしく作ります。根拠を聞かれて答えられなければ、書類全体の信用が落ちます。 → 回避策:数字は過去の実績と、業者からもらった見積書から自分で出す。AIには計算の確認だけさせる。
失敗3:きれいな文章に直しすぎて、自分の話が消える 「もっと説得力のある文章に」と頼むと、AIは具体的な話を削って、立派な一般論に書き換えることがあります。 → 回避策:「内容は変えず、言い回しだけ直して。固有名詞と数字は消さないで」と条件をつける。直した後、元の文と見比べる。
失敗4:お客様の情報を入れたまま読ませる 計画書の下書きに、お得意先の名前や売上の内訳が入っていることがあります。 → 回避策:AIに渡す前に「A社」「B様」などに置き換える(→AIに入れていい情報・ダメな情報)。
向かない人・注意が必要な場面
- 補助金をもらうこと自体が目的になっている人。補助金は「やりたい事業の費用の一部を、あとから補ってもらう」仕組みです。多くは後払いで、自己負担も要ります。やりたいことが先にない場合、AIをどう使っても計画書は薄くなります。
- 「AIで申請書を全部作ります」とうたう代行業者に丸ごと頼もうとしている人。持続化補助金の公募要領には、第三者の支援を受ける場合の注意も書かれています。ものづくり補助金では、計画書の作成を支援した人が似た内容の申請を主導した場合、その人が関わった申請が受け付けられなくなる可能性にも触れています。契約前に、何をしてくれて、いくらかかるのかを必ず確認してください。
- 金額が大きい補助金(数百万円以上)。設備投資を伴うものは、要件を満たせなかった場合の返還の決まりなども複雑です。税理士や中小企業診断士など、専門家への相談をおすすめします。
まとめ
- 補助金の申請にAIを使うこと自体は問題ない。ただし計画の中身と数字は自分で決める
- 持続化補助金は「自分で検討した様子がない」と不採択・取消。ものづくり補助金は「似た計画」に申請制限があり、口頭審査は本人だけ
- AIの役目は公募要領を読む係と、書き上げた計画書の点検係
- 補助金探しは、AIに聞かず公式サイト(jGrants・ミラサポplus)と窓口で
- ルールは回ごとに変わる。最新の公募要領と窓口で必ず確認する
AIに質問役をさせるやり方は業務マニュアルをAIで作るで詳しく書いています。AIに任せていい仕事の全体像はひとり事業主がAIに任せていい仕事・任せてはいけない仕事にまとめています。