Excelやスプレッドシートの関数・マクロをAIに作らせる。「関数で頼むか、マクロまで頼むか」の分かれ目と、AIの式を信じる前の5分検算
「この集計を自動にしたい」とAIに頼めば、関数もマクロもすぐ出てきます。困るのは、それが正しいかを自分で確かめられないことです。関数で頼むか、マクロ(自動で操作を繰り返す仕組み)まで頼むか、頼まずに手でやるかの判断表と、AIが作った式を本番で使う前の5分の検算手順、よくある失敗をまとめました。
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結論から書きます。表計算の困りごとは、まず「関数」で頼んでください。マクロ(ボタン1つで操作をまとめて実行する仕組み)は、関数では無理なときだけにします。
そして、AIが作った式は答えが分かっている小さな表で必ず検算してから本番に使います。式はエラーを出さずに、静かに間違った数字を返すことがあるからです。
なお、この記事は公式情報と一般的な使い方を整理したものです。特定の業種の帳票で長く試した体験記ではありません。
なぜ「関数から」なのか
AIは「やりたいこと」を日本語で伝えるだけで、関数もマクロも書いてくれます。どちらも見た目は同じくらい簡単に手に入りますが、失敗したときの被害の大きさがまったく違います。
- 関数:答えを別のセルに出すだけ。元のデータは変わりません。間違っていても、式を消せば終わりです
- マクロ:表そのものを書き換えたり、行を消したりします。Microsoftの公式説明では、Excelの新しい自動化機能(Office スクリプト)で変えた内容は「元に戻す」では取り消せず、保存先の過去のバージョンから戻すしかないとされています。昔ながらのマクロでも、実行後に「元に戻す」が効かないことはよくあります
つまり、関数は「読むだけ」、マクロは「書き換える」道具です。中身を読めない人が、書き換える道具をいきなり使うのは危ないのです。
関数で頼むか、マクロまで頼むか、頼まないか
| やりたいこと | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 条件に合う売上だけ合計したい | 関数 | 合計・件数・平均はほぼ関数で足りる |
| 別の表から単価や住所を引いてきたい | 関数 | 引き当て用の関数がある。バージョン差に注意 |
| 日付から「月」や「曜日」を出したい | 関数 | 1行で済む。マクロは大げさ |
| 毎月、同じ形の表を10枚以上作り直している | マクロを検討 | 繰り返しの量が多いほど元が取れる |
| 複数のファイルを1つにまとめたい | マクロを検討(要バックアップ) | 関数では難しい。ただし必ず複製で試す |
| 月に1回、20行くらいを直すだけ | 頼まない | 手でやれば5分。式を作って試すほうが長い |
| お金の計算で、1円でも違うと困る(請求・給与) | 関数+必ず手で検算 | 間違いがそのまま事故になる |
判断の分かれ目は2つです。
- 元の表を書き換える必要があるか。ないなら関数で十分です
- 月に何回、何分かかっているか。月1回・5分の作業を自動化しても、検算と修正で最初の1時間が消えます。目安として「月30分以上かかる繰り返し」から、マクロを考える価値が出てきます
AIに頼むときに必ず書く3つ
1. 使っているソフトとバージョン
これを書かないと、自分の環境で動かない式が出てきます。たとえば表から値を引いてくる「XLOOKUP」という関数は、Microsoftの公式ページに「Excel 2016 および Excel 2019 では使用できない」と注記があります。古いExcelを使っているなら「Excel 2019です」と一言添えるだけで、使える関数で書き直してくれます。Googleスプレッドシートなら、そう書いてください。
2. 表の形(列の名前と、何行目から始まるか)
「A列が日付、B列がお客様名、C列が金額、2行目からデータ」のように書きます。実際の表を貼る必要はありません。お客様の名前が入った表は、架空の名前に置き換えた見本3〜5行で十分です。
3. 「答えはこうなってほしい」という例
「この見本なら、10月の合計は12,000円になるはず」と、自分で出した正解を1つ添えます。これが次の検算の材料になります。
本番で使う前の5分検算
AIの式が「それっぽい数字」を返したら、そこで信じずに次の順で確かめます。
- 答えが分かっている小さな表を作る(2分)。5〜10行で、手で計算した答えを先にメモしておきます
- その表に式を入れ、メモの答えと合うか見る(1分)。合わなければ、ずれた数字と期待した数字をそのままAIに伝えます
- わざと「意地悪な行」を足す(1分)。空白のセル、全角の数字、同じ名前の2人、月末の日付など、実際の表で起こりそうな汚れを1〜2行入れます。ここで崩れる式がいちばん多いです
- 本番の表で、1か所だけ手計算と比べる(1分)。全部ではなく、1件だけ電卓で確かめます
- 式の横に「何をしている式か」を1行メモする。半年後の自分が読めるようにです。AIに「この式を中学生にも分かる日本語で説明して」と頼むと、メモ書きにそのまま使えます
マクロの場合は、これに加えて必ずファイルを複製し、複製のほうで試します。 元のファイルを開いたまま試すのは厳禁です。
よくある失敗と回避策
失敗1:エラーが出ないから合っていると思う いちばん多い失敗です。範囲が1行ずれていても、条件の書き方が少し違っていても、式は平気で数字を返します。回避策は上の検算手順の1と2。答えの分かっている表で試さない限り、正しいかは分かりません。
失敗2:表に行を足したら、新しい行が集計に入っていない AIは見本の範囲(たとえば2行目から10行目)で式を書きがちです。本番で行が増えると、増えた分が数えられません。頼むときに「行は毎月増えます」と書いておくと、増えても大丈夫な書き方にしてくれます。
失敗3:マクロを本番ファイルでいきなり動かす 「売上表を月別のシートに分ける」マクロを本番で動かし、元のシートが消えた、というのが典型です。複製で試す、実行前に保存しておく、の2つで防げます。
失敗4:ネットで拾ったマクロ付きファイルをそのまま開く AIとは別の話ですが、マクロは悪用されやすい仕組みでもあります。メールやダウンロードで届いたファイルのマクロを、中身が分からないまま有効にしないでください。自分でAIに書かせたマクロでも、「このマクロは何を消したり書き換えたりしますか」と一度聞いてから動かすと安心です。
失敗5:お客様の実データをそのまま貼る 式を作ってもらうだけなら、実際の名前も金額も要りません。見本で十分です。何をAIに入れてよいかの線引きはAIに入れていい情報・ダメな情報にまとめています。
向かない人・向かない場面
- 表計算ソフトをほぼ触ったことがない人。式を下の行までコピーする操作や、セルの番地の意味があやふやだと、検算そのものができません。まずは並べ替えと合計ボタンだけで済む範囲から始めてください
- 会計ソフトや予約システムに同じ機能がある場合。集計が最初から付いている道具を使っているなら、表計算で作り直すより、そちらの機能を探すほうが早くて安全です
- 税金や給与の計算そのもの。式が正しくても、ルール(税率や控除)の理解が間違っていれば答えは間違います。制度に関わる計算は、必ず公式の情報か税理士などの専門家に確認してください
まとめ
- 表計算の困りごとは、まず関数で頼む。マクロは「表を書き換える必要があり、月30分以上かかる繰り返し」に絞る
- 頼むときはバージョン・表の形・期待する答えの3つを書く
- AIの式は、答えの分かっている小さな表と、意地悪な行で検算してから本番へ
- マクロは必ず複製で試す。「元に戻す」で戻らないことがある
お客様の名簿を見せずに式だけ作ってもらう具体的なやり方は顧客リストの整理をAIに手伝わせるを、「数えるのは表計算、読むのはAI」という分担の考え方はお客様アンケートの集計をAIに任せるも参考にしてください。