パソコンやスマホの不調をAIに聞く。答えは役に立つが、「元に戻せない操作」だけはAIの指示で押さない

プリンターが動かない、Wi-Fiがつながらない、見慣れないエラーが出た。詳しい人が近くにいないひとり事業主にとって、AIはかなり頼れる相談相手です。ただしAIは、初期化やシステム設定の変更のような「元に戻せない操作」も、軽い調子で手順に混ぜてきます。AIに聞いていい不調・聞く前に止まる画面の見分け方、伝え方の手順、指示を3段階に分けて押していいか決める表、よくある失敗をまとめました。

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結論から書きます。パソコンやスマホの不調は、AIに聞いて構いません。ただしAIが出した手順のうち、「元に戻せない操作」(初期化・データの削除・セキュリティ機能を切る・見知らぬソフトを入れる)だけは、AIの指示では押さないでください。そこまで来たら、メーカーの窓口か詳しい人に渡す場面です。

もう1つ。画面に「ウイルスに感染しました。今すぐお電話ください」と出たら、AIに聞く前に画面を閉じてください。 これは不調ではなく、だましの画面であることがほとんどです。

AIに聞いていい不調・聞く前に止まる画面

先に、AIに相談する話かどうかを分けます。ここを間違えると、AIの答えが正しくても被害が出ます。

画面や症状 どうするか
プリンターが動かない、Wi-Fiがつながらない、音が出ない AIに聞いてよい。よくある不調で、答えの当たりやすい分野
見慣れないエラーの文が出た(アプリや更新の失敗など) AIに聞いてよい。エラーの文をそのまま伝える
動作が遅い、勝手に再起動する AIに聞いてよい。ただし「初期化しましょう」と言われたら止まる
「ウイルス感染」「サポートに電話を」と大きな警告と電話番号が出る AIに聞く前に閉じる。電話しない
知らない相手から「パソコンを確認します」と遠隔操作を求められた AIに聞かず断る。 すでに操作させたならネットを切って公的な窓口へ
パソコンが起動しない、仕事のデータが開けない AIに聞くのは「何が起きているかの整理」まで。復旧作業はメーカーか専門業者へ

4つ目の「警告と電話番号」は、サポート詐欺と呼ばれる手口です。本物らしい警告をブラウザ(ホームページを見るソフト)に出し、電話をかけさせ、遠隔操作をさせて有料サポートの契約と支払いへ誘導します。IPA(情報処理推進機構)は「表示された電話番号に電話をかけない」ように注意を呼びかけており、2022年には同機構の相談窓口にこの手口の相談が年間2,365件寄せられています(IPA公表資料より)。

閉じられないときは、ブラウザごと終了させます。それでも出てくる、あるいはすでに電話してしまった・遠隔操作させてしまった場合は、AIで解決しようとせず、IPAの「情報セキュリティ安心相談窓口」や警察の相談窓口に相談してください。お金を払ってしまった場合も同じです。

AIへの伝え方(5分)

AIの答えの当たり外れは、伝え方でかなり変わります。手順は5つです。

  1. 何をしようとして、何が起きたかを1文で書く。「請求書をPDFで印刷しようとしたら、プリンターが『オフライン』と出て止まった」のように
  2. 機械の名前を書く。 Windowsかマックか、iPhoneかAndroidか。プリンターならメーカー名まで。分からなければ「分からない」と書けばよい
  3. エラーの文はそのまま写すか、スクリーンショット(画面の写真)を貼る。 言い換えると、AIは別の不調として答えてしまう
  4. いつから、何をした後からかを書く。「昨日、更新のお知らせが出て再起動した後から」など。これが一番の手がかりになることが多い
  5. 最後に一言足す。「元に戻せない操作が含まれる場合は、その手順の前に必ず書いてください。上から順に、簡単なものから1つずつ教えてください」

5番目が大事です。これを書かないと、AIは「まず再起動、次に設定を変えて、それでもだめなら初期化」と、重い操作まで一気に並べます。1つずつ聞けば、1つ目の再起動で直って終わることも多いのです。

スクリーンショットを貼るときは、画面にお客様の名前・メール・住所・請求金額が写っていないかを先に見てください。写っていたら、その部分を切り取ってから貼ります。AIに入れていい情報の線引きは「AIに入れていい情報・ダメな情報」にまとめています。

AIの指示を3段階に分けて、押していいか決める

AIが手順を出してきたら、1つずつ次の表に当てはめます。

段階 例 押していいか
戻せる 再起動、電源の入れ直し、ケーブルの差し直し、Wi-Fiを一度切って入れ直す、プリンターの電源を切って1分待つ AIの指示どおりでよい
戻せるが、覚えておく必要がある 設定画面の項目を1つ変える、プリンターを登録し直す、アプリを入れ直す 変える前に、元の画面をスマホで撮っておく。撮ってから押す
戻せない・危ない 初期化(工場出荷状態に戻す)、データやアカウントの削除、ウイルス対策ソフトやファイアウォール(外からの侵入を防ぐ機能)を切る、黒い画面に命令文を打ち込む、AIが名前を出した知らないソフトを入れる、パスワードを入力して何かを許可する AIの指示では押さない。 メーカーの公式サポートページで同じ手順が案内されているか確かめる。無ければ人に聞く

3段目に「黒い画面に命令文を打ち込む」を入れているのは、AIがよく出す手順だからです。正しい命令であることも多いのですが、打った人が意味を読めない以上、間違っていても気づけません。意味の分からない命令を打つのは、中身を読まずに契約書へ判を押すのと同じです。

「AIが言っているのだから大丈夫」とは考えないでください。AIは、聞かれた機械の型番や画面の細かな違いまで分かっていません。古い版の手順や、別の機械の手順を自信満々に書くことがあります。この癖は「AIが平気で嘘をつく理由と、嘘を見抜く3つの方法」で詳しく書いています。

AIを使う前にやっておくこと

不調が起きてから慌てないために、元気なうちに3つだけ済ませておきます。

  • 仕事のデータの控えを取っておく。 請求書・顧客名簿・会計のデータは、パソコンの外(クラウドや外付けの記録装置)にも置いておく。これがあれば、最悪「初期化」になっても仕事は止まらない
  • メーカーのサポート窓口を控えておく。 パソコン・プリンター・ルーター(Wi-Fiの親機)の、メーカー公式のサポートページと電話番号を、紙かスマホのメモに残しておく。検索で出てきた番号は偽物のことがあるので、説明書や公式サイトから写す
  • 「ここから先は人に頼む」相手を決めておく。 近所のパソコン教室、家電量販店の修理受付、知り合いの詳しい人。費用が気になるなら、事前に料金表を見ておく

よくある失敗と回避策

失敗1:警告画面の電話番号をAIに聞いてしまう。「この番号はマイクロソフトの公式ですか?」と聞くと、AIが曖昧な答えを返すことがあります。そもそも本物の会社は、ブラウザに電話番号を出して電話させるやり方をまずしません。回避策:電話番号が大きく出る警告は、聞かずに閉じる。

失敗2:AIの手順をまとめて全部やる。 10個の手順を上から一気に試すと、どれで直ったのか、どれで別の不調が出たのか分からなくなります。回避策:1つやったら、直ったか確かめる。直らなければ「○番目までやったが直らない」とAIに返す。

失敗3:AIに勧められたソフトを検索して入れる。「○○という無料ソフトで直せます」と言われて検索すると、似た名前の偽サイトに行き着くことがあります。回避策:ソフトを入れるのは、機械のメーカーかソフトの開発元の公式サイトだけ。分からなければ入れない。

失敗4:遠隔操作をさせてしまった後に、AIに後始末を聞き続ける。 何が入れられたか分からない状態で、AIの一般論に従って操作を重ねると、証拠も消えてしまいます。回避策:ネットから切り、触るのをやめ、公的な相談窓口かメーカーに相談する。

失敗5:直ったので、何をしたか忘れる。 同じ不調は、たいてい数か月後にまた起きます。回避策:直ったら、AIとのやりとりの最後に「今回直った手順を3行でまとめて」と頼み、メモに貼っておく。 次は1分で終わります。

向かない人・向かない場面

  • パソコン1台が止まると仕事が全部止まり、データの控えも無い人。 まず控えを取るのが先です。控えの無いパソコンで、AIの指示を試すのは危険です
  • 画面の文字を読み上げてもらわないと操作できない、家族やパートさん。 AIの説明は文字だけで、どのボタンかを指差してくれません。最初の数回は、横で一緒に見る人がいたほうが安全です
  • 会社や取引先から借りているパソコン。 勝手に設定を変えると、相手の管理ルールに触れることがあります。貸してくれた側の担当者に先に聞いてください
  • お客様の情報が大量に入ったパソコンが、ウイルス感染の疑いで不調なとき。 AIで直すより、専門家に見てもらい、必要なら取引先やお客様への説明も考える場面です

まとめ

  • パソコンやスマホの不調は、AIに聞いてよい。プリンター・Wi-Fi・エラーの文は当たりやすい
  • 「ウイルス感染・今すぐ電話」の警告は不調ではない。AIに聞く前に閉じて、電話しない
  • 伝えるのは「何をしたら何が起きたか」「機械の名前」「エラーの文そのまま」「いつから」の4つと、「元に戻せない操作は先に書いて」の一言
  • AIの手順は「戻せる/戻せるが覚えておく/戻せない」に分ける。3段目はAIの指示では押さない
  • 元気なうちに、データの控え・メーカーの窓口・頼る人の3つを決めておく

そもそもAIを使うためにパソコンを買い替えるべきかどうかは「AIを使うのにパソコンは買い替えるべきか」で書いています。

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