はじめてのパート募集、求人票をAIに書かせていいか。AIは「若手が活躍中」「アットホーム」を勝手に足す

ひとりで回してきた事業で、はじめてパートやアルバイトを募集する。求人票の文章はAIで数分で書けますが、AIの初稿には「若手」「主婦歓迎」のように年齢や性別をしぼる言葉や、決めていない手当・待遇が平気で入ります。求人の文章には法律で決まったルールがあり、守る責任は出した側にあります。AIに渡す前に自分で決める項目、初稿で消す言葉の一覧表、30分で仕上げる手順、よくある失敗をまとめました。

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結論から言うと、求人票をAIに書かせるのは問題ありません。ただし、AIに任せていいのは「仕事の様子を伝える文章」だけです。時給・時間・場所・仕事の中身などの条件は自分で決めて渡し、AIが書いた初稿からは、年齢や性別をしぼる言葉と、決めていない約束を消してから出します。

求人の文章には、ふつうの案内文と違って法律のルールがあります。そしてAIは、そのルールに引っかかる言い回しを「感じのいい求人っぽさ」として足してきます。この記事は、はじめて人を雇うひとり事業主が、AIの初稿をそのまま出さずに済むための手順です。

なぜ求人票だけは気をつけるのか

求人の文章に関係する主なルールは、ざっくり次の3つです。

  1. 年齢をしぼってはいけない(労働施策総合推進法)。「〇歳まで」と書かなくても、「若手」「20代が中心」のように実質しぼる書き方も問題になります。例外はありますが、ひとり事業主のパート募集で当てはまることはあまりありません
  2. 性別をしぼってはいけない(男女雇用機会均等法)。「女性スタッフ募集」はもちろん、「ウエイトレス」「〇〇レディ」のような片方の性別を前提にした職種名も避けます
  3. 条件はうそ・大げさ・まぎらわしい書き方をしない(職業安定法)。2022年の改正で、求人の表示は正確で最新であることが求められるようになりました。実際より高い時給を書く、実態と違う仕事名にする、といったことです

ここで大事なのは、AIが書いた言葉でも、出したのは自分ということです。「AIがそう書いたので」は通りません。

AIの初稿で消す言葉の一覧表

公式の資料とよくある指摘をもとに、AIが入れがちな言葉を整理しました。AIに「パートの求人票を書いて」とだけ頼むと、このあたりが自然に混ざってきます。

AIが入れがちな言葉 何がまずいか 言い換え例
若手が活躍中/20〜30代中心 年齢をしぼっていると受け取られる 未経験の方も一から覚えられます
主婦(夫)歓迎/ママさん活躍中 性別や立場をしぼる印象。言い換えが無難 扶養内・短時間の働き方もできます
体力に自信のある男性 性別をしぼっている 重い荷物(10kg程度)を運ぶ作業があります
アットホームな職場 違反ではないが中身がない。疑われる言葉の代表 スタッフは店主と2人です
交通費支給/昇給あり 決めていないなら書いてはいけない 決めた内容だけを書く(「上限〇円」など)
高収入/しっかり稼げる 実態より大きく見せる表示になりうる 時給〇円。月〇時間なら月〇万円程度
残業ほぼなし 本当でなければまぎらわしい表示 残業は月〇時間程度(繁忙期は〇時間)

一番危ないのは、4行目から下の「決めていない待遇を書き足す」ほうです。年齢や性別の言葉は読めば気づけますが、「交通費全額支給」「昇給年1回」のような一文は、いかにも求人らしいので見落とします。書いた以上、それは応募してきた人への約束です。

AIに渡す前に、自分で決めておく項目

求人の文章に書く条件は、法律で項目が決まっています。下の表をメモ帳に作り、全部埋まってからAIに渡すのが、遠回りに見えて一番早い順番です。

項目 決めておくこと
仕事の中身 何をするか。将来ほかの仕事も頼む可能性があるか
働く場所 どこで働くか。将来ほかの場所に変わる可能性があるか
契約期間 期間の定めがあるか。更新するならその基準・上限
試用期間 あるか、何か月か、その間の条件は変わるか
時間・休み 始業・終業、休憩、残業の有無、休日
お金 時給、手当(交通費など)、払う日。地域の最低賃金を下回っていないか
保険 雇用保険・社会保険などの加入の有無
募集する人 屋号・住所・連絡先

「将来変わる可能性」は、2024年4月のルール変更で書くことになった項目です。ひとり事業主なら「変更なし」で済むことが多いですが、空欄のままにせず決めておきます。正確な項目と書き方は、厚生労働省やハローワークの案内で必ず最新のものを確認してください。

残業代をはじめから時給や月給に含める形(いわゆる固定残業代)にする場合は、書き方の決まりがもっと細かくなります。その場合はAIに頼る前に、ハローワークか社会保険労務士に相談するのが安全です。

30分で仕上げる手順

  1. 条件の表を埋める(10分):上の表を自分で埋めます。迷った項目は「未定」と書いて、決まるまで募集を出しません
  2. AIに頼む(3分):条件の表を貼り、こう頼みます。「この条件だけを使ってパート求人の文章を書いてください。表にない待遇・手当・数字は書かないでください。年齢・性別をしぼる表現は使わないでください」
  3. 仕事の様子だけ自分の言葉を足す(5分):1日の流れ、最初の1週間で覚えること、職場の人数。ここは自分にしか書けず、応募する人が一番知りたいところです
  4. 一覧表の言葉を探して消す(5分):「若」「主婦」「男性」「女性」「歓迎」「支給」「あり」で文章内を検索します。パソコンなら Ctrl+F で探せます
  5. 条件の表と1行ずつ見比べる(5分):時給・時間・場所の数字が表と一致しているか。AIが「時給1,100円〜」のように「〜」を勝手に付けていないかも見ます
  6. もう一度AIに確認させる(2分):「この求人の文章に、年齢・性別・国籍をしぼる表現や、条件表にない約束が入っていないか指摘して」。ただしこれは見落とし探しの補助で、最後に決めるのは自分です

手順2の「表にない待遇は書かないで」と頼んでも、AIは足してくることがあります。だから手順4と5は省けません。

よくある失敗と回避策

  • 「いい人に来てほしい」と人物像を細かく書かせる:AIは「明るく元気な20代」のように年齢や見た目の印象まで描写しがちです。人物像は「何ができる人か」(パソコンの文字入力ができる、など)に限ります
  • 以前の求人をAIに渡して直させる:昔の時給や古い条件がそのまま残ります。条件は毎回、表から入れ直します
  • SNSやホームページだけで募集するから大丈夫だと思う:自分のSNSでの募集も、条件の明示や正確な表示のルールの対象です。むしろ求人サイトのような事前チェックが入らないぶん、自分で見るしかありません
  • 応募者とのやりとりにも同じ文面を使い回す:面接の日程連絡にAIの定型文を使うのは便利ですが、そこに条件を書き直すと求人票と食い違います。条件の話は求人票の表どおりに伝えます
  • 応募者の履歴書をAIに読ませて選ばせる:個人情報をAIに入れることになり、選んだ理由も説明できません。選ぶのは自分です

向かない人・向かない場面

  • 固定残業代や歩合給にする人:書き方の決まりが細かく、間違えやすい場面です。専門家に相談してから
  • 外国の方を雇う予定がある人:在留資格の確認など、求人票以外の手続きが絡みます。AIの一般論ではなく、ハローワークか専門家へ
  • 条件がまだ決まっていない人:AIに相談しても時給は決まりません。人件費の計算と、地域の最低賃金の確認が先です

法律の細かい判断が必要になったら、必ずハローワークや社会保険労務士などの公式窓口・専門家に確認してください。この記事は、AIの初稿で事故を起こさないための手順で、法律の解説ではありません。

まとめ

求人票づくりでAIが一番役に立つのは、「どんな職場で、1日どんなふうに働くか」を読みやすい文章にするところです。条件は自分で決めて表にし、AIにはその表だけを使わせる。初稿からは、年齢や性別をしぼる言葉と、決めていない待遇の一文を消す。この順番を守れば、30分ほどで出せる求人票になります。

AIが「それらしい一文」を勝手に足すのは求人票に限りません。チラシで同じことが起きる例はチラシや案内文をAIに書かせるときに、雇った後にAIを使ってもらうときの決めごとはパートや家族にAIを使わせるときのルールにまとめています。AIの書いた事実をどう疑うかはAIの嘘を見抜く3つの方法もどうぞ。

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