値上げのお知らせをAIに書かせる前に、自分で決める5つ。AIは謝りすぎて、理由を盛って、勝手に特典を約束する

仕入れも光熱費も上がり、ひとり事業主も値上げを避けられなくなりました。お知らせ文はAIで数分で書けますが、AIの初稿には「謝りすぎる」「上がった理由の数字を作る」「既存のお客様への据え置きを勝手に約束する」という癖があります。文章を頼む前に自分で決めておく5項目、AIの初稿で消す4か所、30分で仕上げる手順、店頭掲示・メール・LINEで変える部分、よくある失敗をまとめました。

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結論から言うと、値上げのお知らせでAIに任せていいのは「文章の形」だけです。新しい金額、いつから、どの商品やサービスが対象か、昔からのお客様をどう扱うか、理由を何と言うか。この5つを決めるのは自分で、決めてからAIに渡します。

逆の順番、つまり「値上げのお知らせを書いて」とだけ頼むと、AIはそれらしい文章を一瞬で返してきます。ただしその中身は、謝りすぎで、理由の数字が作り物で、こちらが決めていない特典まで約束しています。そのまま出すと、お客様との約束になってしまう部分が出ます。この記事では、先に決める5項目と、AIの初稿で必ず消す4か所、30分で仕上げる順番を書きます。

先に自分で決める5項目

値上げの案内で、お客様が本当に読むのは「いくらになるのか」「いつからか」「自分は対象か」の3点です。文章の上手さではありません。だからAIに書かせる前に、次の5つをメモ1枚にまとめます。

決める項目 決め方の目安 AIに決めさせると起きること
①新しい金額 消費者向けなら税込みで書く。「〇〇円→△△円(税込)」 税込か税抜か曖昧なまま書く。桁を間違えても気づかない
②適用日 解説記事ではおおむね1〜2か月前の告知が目安。取引先向けは2〜3か月前 「〇月〇日より」と空欄にするか、今日の日付から適当に置く
③対象 全商品か、一部か。一部なら品名を全部書く 「一部商品」とぼかして、どれが上がるのか分からない文になる
④昔からのお客様の扱い 据え置き期間を設けるか、回数券や前払い分はどうするか 「既存のお客様は3か月間据え置き」などを勝手に書く
⑤理由を1行で 「仕入れ価格の上昇」「光熱費の上昇」のように事実だけ 「原材料費が約30%上昇し」のように根拠のない数字を足す

このうち①の税込み表示は、お店や教室のようにお客様が一般の方なら注意が要ります。2021年4月から、消費者向けの値札・チラシ・ホームページなどの価格表示は税込みの総額で示すことになっています。会社どうしの取引や、個別に出す見積書・請求書は対象外とされています。自分の商売がどちらに当たるかは、税務署か税理士に必ず確認してください。

②の時期は法律で決まっているものではなく、各社の解説記事に共通する慣行です。ただし、月謝や会費のように毎月引き落とす形なら、自分の規約や申込書に「料金改定は〇日前までに通知する」と書いていないか先に見ます。書いてあれば、それが優先です。

AIの初稿で消す4か所

5項目を渡して書かせても、AIの初稿には決まった癖が出ます。消す場所を先に知っておくと、直すのは5分で済みます。

1. 謝りすぎ。「誠に心苦しい」「やむを得ず」「大変恐縮ではございますが」が1通に3回以上出てきます。お詫びは1回で十分です。謝るほど「悪いことをしている」印象になり、かえって読み手を不安にさせます。お詫びは1回、お礼は1回、残りは事実だけにします。

2. 作られた理由と数字。「原材料費が約30%上昇」「物流費が2倍に」のような数字は、こちらが渡していなければAIが作ったものです。もっともらしいので見落としますが、お客様に「どこの数字ですか」と聞かれたら答えられません。自分で確認した数字以外は全部消します。数字がないなら「仕入れ価格の上昇が続いているため」で足ります。AIが数字を作る理由はAIが平気で嘘をつく理由に書いたとおりで、値上げ文でも同じことが起きます。

3. 一般論の企業努力。「経費削減に努めてまいりましたが」「サービス品質の維持向上のため」。どの会社の案内にも入っている定型句で、読み手には何も伝わりません。本当にやった工夫があればそれを1行、なければ消します。チラシの盛り言葉と同じで、消したほうが信用されます。

4. 勝手な約束。これが一番危険です。「既存のお客様は3か月間旧価格で」「回数券は期限内そのまま使えます」「ご不明点はいつでも無料でご相談ください」。AIは気を利かせてこういう一文を足しますが、こちらが決めていなければ、出した瞬間にお店の約束になります。④で決めたこと以外の配慮や特典は、一字残らず消します。

30分で仕上げる手順

  1. 5項目をメモにする(10分)。上の表の①〜⑤を、自分の言葉で箇条書きにします。ここに一番時間をかけます
  2. AIに渡す(3分)。指示はこの形で足ります。「お客様向けの価格改定のお知らせを書いてください。内容は以下の5点だけ。これ以外の理由・数字・特典・配慮は書かないでください。お詫びは1回、お礼は1回、全体で300字以内」。その下に5項目を貼ります
  3. 消す4か所を順に見る(5分)。謝りすぎ、作られた数字、一般論、勝手な約束。見つけたら直させるより自分で消すほうが早いです
  4. お客様の目で読む(5分)。一番長く通ってくださっている方の顔を思い浮かべて、「いくら・いつから・自分は対象か」が3秒で分かるか確認します。分からなければ、金額と日付を文章の中ではなく独立した行にします
  5. 媒体ごとに短くする(7分)。下に書くとおり、店頭掲示とLINEはさらに削ります

店頭掲示・メール・LINE・ホームページで変える部分

同じ文章を全部に貼ると、どこかで読まれません。元の文章を1本作ってから、出す場所に合わせて削ります。

  • 店頭の掲示:挨拶も理由も不要です。「〇月〇日より △△ 〇〇円→△△円(税込)」の1行と、聞かれたときに答える一言だけ。理由は口頭で伝えるほうが伝わります
  • メール・手紙:元の文章をそのまま使えます。件名は「価格改定のお知らせ」にして、本文の冒頭に金額と日付を置きます
  • LINE:スマホの1画面に収めます。長いと読まれる前に閉じられるので、金額・日付・対象の3行に絞り、詳しくはホームページへ、とします
  • ホームページ:掲載日を入れておきます。あとから「聞いていない」と言われたとき、いつから出していたかが分かります

どの媒体でも、お客様の名前や契約内容をAIに貼る必要はありません。文章の形を作るだけなので、「〇〇様」の部分は空欄で書かせて、送るときに自分で入れます。

よくある失敗と回避策

  • 「値上げのお知らせを書いて」と一言で頼む:5項目が空のまま、AIが全部埋めて返してきます。埋まった内容を正とみなして送ってしまう人が多いです。空欄で頼まず、決めてから頼みます
  • AIの文章が丁寧だから安心する:丁寧さと正確さは別です。丁寧な文章ほど、作られた数字や勝手な約束が目立ちません。消す4か所を機械的にチェックします
  • 全商品を上げるのに「一部商品の価格改定」と書く:AIは角を立てないように「一部」とぼかしがちです。全部なら全部と書きます。ぼかすと、来店したお客様が店頭で初めて知ることになり、その場の印象が一番悪くなります
  • 告知の直後に値上げする:文章ができたので今日出して来週から、とやりがちです。回数券や前払いのお客様は、知らずに前の料金で買った直後かもしれません。告知から適用までの期間は、文章を作る前に決めておきます
  • 文章に時間をかけて、聞かれたときの答えを用意していない:実際には、文章より「なんで上がるの?」と直接聞かれたときの一言のほうが大事です。⑤で決めた理由を、口で言える長さにしておきます

向かない人・向かない場面

  • 特定の取引先1社との交渉:お知らせではなく交渉なので、文章の型より、相手の事情と自分の数字の話です。AIには「相手が言いそうな反論を10個出して」と頼むほうが役に立ちます
  • 契約書で価格が固定されている相手:契約期間中の変更は、文章の問題ではなく契約の問題です。先に契約書を読み、分からなければ専門家に確認してください
  • 苦情が続いている最中のお客様:値上げの案内が火に油になります。そちらの対応が終わってから、個別に伝えます
  • 上げる金額や時期がまだ決まっていない人:AIに相談しても決まりません。原価と時間を自分で出すのが先です

まとめ

値上げのお知らせは、文章の上手さで決まりません。いくら、いつから、何が、昔からのお客様はどうなる、理由は何、の5つを自分で決めれば、文章はAIが数分で形にします。初稿から消すのは、謝りすぎ、作られた数字、一般論の企業努力、勝手な約束の4か所。特に4つ目は、残したまま出すとお店の約束になります。

AIが書いた丁寧な文章は、そのままだとどこか他人行儀にもなります。送る相手が長く通ってくださっている方なら、最後の1行だけ自分の言葉に直す。その手直しの仕方はAIっぽい文章の3分の手直しに書きました。

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