同業の小さな事業者はAIを何に使っているのか。1,272社の調査で分かった「みんなが使う仕事」から始め、少数派の使い方は後回しでいい
まわりの事業者はAIを何に使っているのか。東京商工会議所が2026年に公表した中小企業1,272社の調査では、従業員5人以下でも約8割が何らかの形で使い、会社として認めている業務の1位は文書作成・要約(83.4%)でした。一方、お客様の問い合わせ対応に認めている会社は1割に届きません。調査の数字をひとり事業主向けに読み直し、用途ごとの「今すぐ・様子見」の判断表、次の1つを決める手順、数字の読み違いをまとめました。
この記事には広告(アフィリエイトリンク)を含みます。リンク経由で購入・申込みがあった場合、当店に紹介料が入ることがあります。紹介料の有無で評価は変えていません。
結論から書きます。小さな事業者のAIの使い道は、メールや報告書などの文書づくり・その校正・調べもの・資料づくりの4つに集中しています。まだ手をつけていないなら、この4つのどれかから始めるのが一番外れません。
逆に、お客様への自動応答や経営判断のような使い方は、調査ではまだ少数派です。「他社はもっと進んでいるのでは」と焦って難しい使い方から入る必要はありません。この記事は店主が他社を取材した話ではなく、公的な調査の数字を、ひとり事業主向けに読み直した話です。
元にした調査
東京商工会議所の「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2026年6月17日公表)です。主に東京23区内の中小企業1,272社が回答し、調査期間は2026年3月25日〜4月15日。生成AI(文章や画像を作るAI)について、使っているか・何に使っているか・何に困っているかを聞いています。
ひとり事業主に近い「従業員5人以下」(323社)の答えを足し上げると、約77%が何らかの形でAIを使っていました。ただし内訳を見ると、一番多いのは「個人レベルで活用」の38.1%。会社として決めて使っているというより、社長やスタッフが自分の判断で使っている段階の会社が多い、ということです。
なお、国の調査(総務省、2025年度)でも、生成AIを活用する方針がある中小企業は58.1%でした。数字は聞き方で変わりますが、「もう半分以上が使っている」は共通しています。
何に使っているか。用途ごとの判断表
AIを使っている会社(805社)に「会社として使用を認めている業務」を聞いた結果です(複数回答)。右の2列は、この数字をひとり事業主がどう受け取ればいいかの店主の判断です。
| 用途 | 認めている割合 | ひとり事業主の判断 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 文書作成・要約(報告書・議事録・メールなど) | 83.4% | 今すぐ。最初の1つに最適 | メールの下書き |
| 文章の校正・要約 | 62.1% | 今すぐ。自分の文章を見直させるだけで失敗が少ない | 誤字チェック |
| 情報収集(検索・調査) | 58.1% | 使ってよいが確認必須。AIの答えには誤りが混じる | 嘘の見抜き方 |
| 資料作成 | 54.7% | 文書に慣れてから | 提案資料・スライド |
| データ集計・分析・グラフ作成 | 27.7% | 様子見でよい。数字は表計算で出す方が確実 | アンケート集計 |
| 顧客問合せ対応(チャットボット等) | 6.7% | 後回し。お客様に直接出るので一番慎重に | AIの自動応答 |
ここから読み取れることは2つです。
- 上位の用途は、失敗しても自分で気づける仕事です。 下書きや校正は、最後に自分が読んでから使います。間違いがお客様に届く前に止められるので、多くの会社が安心して認めています
- 下位の用途は、間違いがそのまま外に出る仕事です。 自動応答は、AIの誤った答えがお客様に直接届きます。少数派なのは技術が遅れているからではなく、各社が慎重に様子を見ているからと読むのが自然です
使う理由と、困っていること
AIを使う理由の1位は「作業時間の短縮」で86.2%。ほとんどの会社が、売上を伸ばすより手間を減らすために使っています。
困っていることの1位は「セキュリティの確保」で46.7%。気になる数字がもう1つあります。AIを使っている会社のうち43.2%が無料ツールだけ、有料と無料の両方を使う会社を合わせると86.8%が無料ツールを使っていました。調査をまとめた側も、無料ツールは入力した内容がAIの学習に使われる可能性があると注意しています。
さらに、AIの使い方の決まり(社内ルール)を作っている会社は7.7%だけでした。「みんな使っているが、ルールはまだ」がいまの実態です。
一方、AIを使っていない会社(148社)の理由の上位は、「必要性を感じない」40.5%、「導入による成果が分からない」29.7%、「活用方法が分からない」23.0%でした。
次の1つを決める手順(15分)
調査の数字を、自分の次の一手に落とし込む手順です。
- 先週やった文章の仕事を3つ書き出す(5分)。メール、見積の添え書き、お知らせ、報告書など。上の表の上位2つに当てはまるものが必ずあるはずです
- その中から「最後に自分が読んでから出すもの」を1つ選ぶ(2分)。自動で外に出るもの、お客様の名前や病歴などが入るものは選ばない
- 無料版か有料版か、学習に使われる設定かを確認する(3分)。無料のまま使うなら、設定で学習をオフにし、お客様の情報は入れない。判断は無料版と有料版の違いにまとめています
- 1週間、その仕事だけAIで下書きする(毎回5分)。前と比べて何分減ったかを1行メモしておく
- 1週間後に、表の次の段へ進むか決める(5分)。短縮できていれば校正や調べものへ。減っていなければ、頼み方を見直すか、その仕事はAI向きではないと判断してやめる
ポイントは、一度に1つだけ増やすことです。調査で上位に並ぶ用途も、各社が一度に全部始めたわけではありません。
数字の読み違いに注意
この種の調査で、よくある読み違いです。
- 「83.9%が活用」を「ほぼ全社がAIで成果を出している」と読む。 この数字には「個人レベルで活用」が含まれます。社長が時々使っているだけの会社も数に入っています。焦る数字ではありません
- 認めている業務=実際によく使っている業務、と読む。 調査が聞いたのは「会社として認めている業務」です。認めていても、実際の使用頻度は分かりません
- 東京の数字を全国の自分に当てはめる。 回答は主に東京23区内の会社です。地方や業種によって、実態は違う可能性があります
- 少数派の使い方を「遅れている」と思って無理に始める。 問い合わせ対応や経営判断にAIを使う会社が少ないのは、慎重さの表れでもあります。自分だけが先に失敗する必要はありません
向かない人・この記事が役に立たない場面
- すでにAIを毎日使っている人:この記事の手順は「最初の1つ」を決めるためのものです。物足りなければ、任せていい仕事・任せてはいけない仕事で範囲を広げる判断をしてください
- 業種特有の使い方を知りたい人:調査は業種をまたいだ集計です。自分の業種でどう使えるかは、業界団体や同業者の話の方が具体的です
- 「同業者がやっているから」だけで決めたい人:他社で時間が減った仕事が、自分でも減るとは限りません。手順4の「1週間メモ」で、自分の数字を必ず取ってください
まとめ
- 従業員5人以下でも約77%がAIを使っている。ただし多くは「個人レベル」
- 会社として認める用途の上位は文書作成(83.4%)・校正(62.1%)・調べもの(58.1%)・資料(54.7%)
- お客様への自動応答は6.7%と少数派。後回しでいい
- 使っている会社の86.8%が無料ツールを使い、ルールを作っているのは7.7%だけ。無料で使うなら学習オフとお客様情報を入れないことを先に決める
- 次の一手は「最後に自分が読んでから出す文章の仕事」を1つ選び、1週間だけ試す
調査の数字は東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果」(2026年6月17日)、総務省の2025年度企業向けアンケートの公表資料によります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
始める順番に迷ったら、ひとり事業主のAI導入 30日ロードマップもあわせてどうぞ。